IT・デジタル分野の人材育成に必要な考え方や手法(プロセス)とは

human resources development

ITスクールを運営する中で気づいた、IT・デジタル分野の人材育成に必要な考え方や手法(プロセス)について記載したいと思います。

1. 人材育成のパターン分析

先ずは、IT・デジタル分野の人材育成のパターンを分析してみます。「良い育成パターン」を模索するために、逆に「悪い育成パターン」について考えてみます。具体的にイメージするために下図も参考にしてください。

training pattern analysis

1.1. 悪い育成パターンとは

悪い育成パターンと思われる事象を下記にざっと列挙してみます。

  • 場当たり的に最新トピックやトレンドを詰め込ませる
  • 基礎や土台の強化に時間をかけようとしない
  • 本質や概念を理解させず、ツールの使い方のみ教える
  • 自発的に調べたり、考えさせる力を鍛えていない
  • インプットのみでアウトプットさせない

如何でしょうか。人材育成する側の立場の方は、何かしら心当たりはないでしょうか。上記のようなパターンを続けていると、あまり良い人材は育たないと感じます。

因みに、悪い育成パターンが続くと、図の(A)に示すようなプロセスを辿り、思うように知識やスキルのレベルは向上していかないでしょう。このような状況に陥っている場合は、次に記載する「良い育成パターン」を参考にしてみましょう。

1.2. 良い育成パターンとは

良い育成パターンと思われる事象を下記にざっと列挙してみます。基本的に、悪い育成パターンの裏返しとなります。

  • 最新トピックやトレンドは、既存のものに関連付けて立体的に教える
  • 最新を追う前に、基礎や土台を徹底的に強化させる
  • 特定のツールの使い方ではなく、応用が利く本質や概念を学ばせる
  • 1教えて10学ばせるために、自走できる習慣を身につけさせる
  • アウトプットを前提としてインプットさせる

如何でしょうか。上記のようなパターンを続けることによって、効果的に良い人材を育成していくことができると思います。因みに、良い育成パターンを続けると、図の(B)に示すようなプロセスを辿り、着実に知識やスキルのレベルは向上していくでしょう。

2. おすすめの人材育成の手法(プロセス)

もう少し具体的な参考事例として、現在、ITスクールで実践している人材育成の手法(プロセス)を紹介します。

2.1. 継続させるための初期条件の設定

いきなり厳しい初期条件が突き付けられます。残念ながら、誰に対しても効果的な人材育成が成立する訳ではありません。なぜなら、人材育成とは楽な道のりではなく、険しい道のりを辿る必要があるからです。つまり、育成する側も育成される側も、本気で挑むことが必要不可欠なのです。

初期条件に合致することで、かなりの高確率で人材育成は成功しやすくなります。もし、初期条件に合致していない場合は、育成される側の状態や環境などを整えることを優先させましょう。決して、無理に人材育成をスタートさせるべきではありません。後に高い確率で挫折してしまうことになるからです。

私が考える、育成される側の初期条件を下記にざっと列挙してみます。基本的に、これらは必須事項となります。

  • 強い必要性を持っていること
  • 険しい道のりが続くことを覚悟していること
  • 身銭を切ること
  • 復習などの時間を確保できること
  • 自分自身で考え主体的に取り組めること

2.2. 初期段階で身につけさせる要素

残念ながら、最新トピックやトレンドに飛びついた所で、返り討ちにあうのが関の山です。なぜなら、本質や概念などを修めていないため、表面的に分かった感じになるだけで、内容を本当に理解しきれていないからです。だから、思ったように応用が利かず、上手く扱うことができないのです。

急がば回れということで、ちゃんと「王道」を歩むべきなのでしょう。そんな悠長な時間はない、などと言い訳を言っている限りは、物事は一歩も前に進みません。なら、早く着手させるのです。

先ずは、下記に挙げる要素を徹底的に身につけさせましょう。これらは、人材育成の基礎や土台となる部分です。そして、後に、この部分に成功体験を積み上げさせ、少しずつ自信をつけさせていくことになります。このプロセスが「王道」です。

  • プログラミングの基本的な考え方(変数、反復処理、条件分岐、テキスト処理など)
  • インターネットを使用して自分で調べる力や習慣
  • 最初は自分で考える力や習慣
  • ゼロからシステムを組み立てていく力や発想力
  • トラブルシューティング(問題解決)の手法

2.3. 俯瞰させるための到達目標

ただ漠然と学ばせているだけでは、良い人材は育たないと思います。しっかりと到達させるべき目標を定めて、具体的にイメージできるように説明してあげましょう。現在地と目標地点、そしてその距離を意識させることが重要です。

ただし、育成の初期の段階で到達目標を説明しても、あまり良い効果は出にくいです。なぜなら、育成される側が、自分の周囲の状況(現在地)をまだ上手く把握できていないからです。ある程度、育成が進み、自分の現在地が分かるようになってきた段階で説明するのが効果的でしょう。ちょうど、視野が狭くなってくるタイミングで、到達目標を俯瞰させるのが理想的です。

因みに、ITスクールの現在の「到達目標」は下図のような感じになっています。詳しい説明は割愛します。

goal of training

2.4. 最新トピックやトレンドの学習方針

さて、基礎や土台の部分が築けた後は、もう自分自身を育成していける状態が整っています。目標設定と自己学習のサイクルを持続的に回していけるはずです。下記に挙げるポイントに注意しながら、世の中の最新のトピックやトレンドを積み上げていきましょう。特定の分野を深掘りしていくも良し、広範囲な分野を連携させていくも良し。どのようなキャリアを歩んでいくかは、あなた次第です。

  • 最新情報にアンテナを張り続ける努力をする
  • 世の中の大きな流れをおさえ続ける努力をする
  • 自分なりの専門テーマを1つ持ってみる
  • 各専門分野に詳しい人たちと交流していく

まとめ

今回は、ITスクールを運営する中で気づいた、IT・デジタル分野の人材育成に必要な考え方や手法(プロセス)について記載しました。

最初からすべての要素を取り入れようとすると大変だと思います。また、すべての要素が、あらゆるケースに対して有効とは限りません。気になった要素があれば、少しずつ試しながら取り入れていくのが良いと思います。

今後も、IT・デジタル分野の人材育成について、自分なりに試行錯誤していこうと考えています。皆さんも色々と試行錯誤していってください。