企業経営におけるRPAの導入目的とは

rpa introduction purpose

企業経営における「RPA導入」の位置づけを考えてみました。

「さて、企業はなぜRPAを導入するのでしょうか?」
「それは、業務を自動化するため…」

確かに、RPAには業務プロセスを自動化するという強力な機能があります。ただし、企業経営という視点で見た場合は、「なぜ自動化するのか?」を深く掘り下げる必要があります。

1. RPAの導入目的

結論から述べると、RPAを導入する目的は、業務の生産性を向上させ企業の利益を伸ばしていくためです。ごく普通の考え方ですが、導入する企業は本当にこれを忘れがちなのです。経営者も現場の社員も、目の前の業務をドンドン自動化したくて仕方なくなってしまいます。少し落ち着いて考えてみましょう。

RPAで業務を自動化するためには、ワークフロー(またはシナリオ)を作成する必要があります。また、RPAを運用する体制を構築したり、ワークフローを継続的にメンテナンスする必要もあります。

つまり、RPAソフトのライセンス費用とは別に、ワークフローの作成コストや運用などのランニングコストが発生することになります。企業経営の視点で見れば、投下したコスト以上の効果が将来的に回収できないのであれば、RPAを導入する意義はないと思います。業務を自動化すること自体が目的ではないのですから。

2. RPAの導入効果

少し落ち着いて考えられる状態になりましたか。では、ここからは「RAPの導入効果」について考えてみましょう。当然ですが、効果があるからこそ、コストをかけてまでRPAを導入するはずです。その効果が何かを正しく認識しておくことは極めて重要です。RPAの導入効果を、「コスト効果」と「売上増効果」に分けて整理してみます。

A. コスト効果(短期的)

RPA導入によって下記のようなコスト効果が期待できます。

  • 処理速度が向上し、処理件数を増やすことができる
  • 作業ミスによる手戻りを減らすことができる
  • 業務の属人化を防ぎ、引き続き業務を減らすことができる

B. 売上増効果(長期的)

RPA導入によって下記のような売上増効果が期待できます。

  • 24h稼働により、サービスの質や量を向上させることができる
  • バックオフィス業務からフロント業務へ人材リソースを配置転換できる
  • 高付加価値を生み出す新規人材の雇用に費用を回せる

さて、経営者や管理者は真っ先にAの「コスト効果」に目を奪われる傾向があります。とにかく、無駄なコストを削減したくてウズウズしていると思います。

基本的に人件費が一番高くつきます。人間をRPAロボットに置き換えることで人件費を圧縮し、短期的に利益を増加させようとします。数字的にも効果が見えやすいため、多くの企業が飛びつくことでしょう。

人件費を圧縮すれば、その企業は短気的に利益を最大化することができるかもしれません。しかし、それで終わりであれば、そう遠くない将来、この企業はいばらの道を歩むことになるでしょう。

なぜでしょうか。それは、コスト削減だけをやっていては、長期的に見た場合に売上高が増えていかないからです。世の中、ドンドンと技術が進化していきます。競合企業もただボーっとしている訳ではありません。つまり、新しい付加価値を生み出せない企業は、やがて市場から退出を求められるのです。これが資本主義です。ではどうすればよいのでしょうか。

もうお分かりですね。そう、長期的に売上高を伸ばしていく必要があります。本当は利益を指標として見るのですが、その源泉である売上高が継続的に伸びないとジリ貧です。つまり、RPAを導入する場合、経営者はAの「コスト効果」以外にも、Bの「売上増効果」を念頭に置いて動く必要があります。

3. 攻めのRPAとは

「これから先の時代、企業の売上高を伸ばす要素は何だと思いますか?」

それは「データ」と「人材」です。これらは、売上を生み出す「新たなサービス」を作るのに必要不可欠な存在です。また、これらがRPAとどのような関係を持つのか分かれば、競合企業に差をつけることができるでしょう。では、RPAとの関係性を見ていきます。

3.1.「データ」視点

「RPAで業務プロセスを自動化する際に、注目すべきことは何でしょうか?」

ただ単に業務を自動で処理させるだけでは芸がありません。自動化する過程では、大量のデータを収集したり、蓄積したりすることができます。つまり、RPAのワークフローの内部に、データを収集・蓄積するためのセンサーのようなロジックを埋め込んでおくことが重要になります。

「では、どんなデータを集めればよいのでしょうか?」

それは事業内容や業界によって変わってくるため、自分たちで考える必要があります。インターネット、自社の基幹システム・データベースなどには大量のデータが眠っているはずです。何のデータが、どのようなサービスに繋がるかを想像することが求められてくるでしょう。

3.2.「人材」視点

「御社は、RPA導入によって浮いた人材(人的リソース)をどうする予定ですか?」

これについては、「優しい見方」と「厳しい見方」を書いておきます。それぞれメリットとデメリットがあるため、一概にどちらが良いかは判断できません。

先ずは「優しい見方」です。RPAロボットによって置き換えられた人材は、売上を生み出す部門や新規のサービスを企画する部門などに配置転換していきます。RPAロボットにより置き換わるのはバックオフィス業務が大半です。しかし、場合によっては他部門への配置転換がスムーズに進まないことも予想されます。

従って、人材の配置転換には、一定期間の研修などの「人材育成」が必要になります。人材への投資に成功すれば、企業の将来の売上増に貢献する頼もしい存在になるでしょう。

「厳しい見方」としては、RPAロボットによって置き換えられた人材はリストラされる可能性もあります。人員削減で捻出されたお金は、より高付加価値を生み出せる人材を雇う費用として使用されるかもしれません。

人材育成にはお金と時間がかかります。ある程度の費用をかけてでも、人材市場から優秀な人材を獲得するのは効率的な考え方です。ただし、外部から来た人材は企業文化に馴染めずに離職するリスクもあるので、注意が必要です。

まとめ

今回は、企業経営における「RPA導入」の位置づけを考えました。この辺りの考え方は、企業の経営者は勿論ですが、従業員の方も知っておくべきだと思います。要点を下記にまとめておきます。

  •  自動化すること自体がRPA導入の目的ではない
  • RPA導入の目的は、業務の生産性を向上させ企業の利益を伸ばすこと
  • RPA導入にはコストが発生する
  • RPAの導入効果には「コスト効果」と「売上増効果」がある
  • 売上増は「データ」と「人材」の視点で考える